【先生向け】もう一歩、考えてみる。「障がいって、どこにある?」出張ボッチャ活用レシピ(総合学習・高学年編)

こんにちは アンドナの野村です。
これまで「出張ボッチャ」の活用レシピとして、低学年編や総合学習編をご紹介してきました。
今回は、高学年の子どもたちと、もう一歩だけ踏み込んで考えてみるレシピ。
テーマは、「障がいって、どこにあるんだろう?」です。
ただ、この授業の目的は、障がいについて詳しく覚えることではありません。
障がいの種類を知ったり、福祉の制度を勉強したりすることが中心でもないのです。
出張ボッチャで選手たちと実際に出会い、一緒に楽しんだ体験。
そこから、
「できないって、誰の問題なんだろう?」
「環境が変わると、できることも変わる?」
「自分にできることはある?」
と、少し立ち止まって考えてみる。
そして、そこで生まれた気づきが障がいのことだけで終わらず、身近な暮らしや、これから出会ういろいろな社会の課題について考えるきっかけになればと思っています。
つまり、
障がいを「理解するための授業」というより、障がいを入口に、社会を見る目を少し広げてみる時間。
そんな総合学習の提案です。
私たちは、福祉や教育を「教える専門家」ではありません
最初にお伝えしておくと、私は教育の専門家ではありません。
福祉についても、制度や支援技術を教える専門家ではないのです。
アンドナがずっと行ってきたのは、障がいのある人と学校、企業、地域など、普段あまり出会うことのない人たちを楽しくつなぐこと。
「出張ボッチャ」も、その一つです。
だから今回も、「障がいについては、こう教えてください」というマニュアルではありません。
選手たちと一緒にボッチャをした体験から、「こんな問いを子どもたちと一緒に考えてみたら、どんな答えが出てくるだろう?」というアイデアの種です。
障がいを正面から扱うのは、少し難しいテーマでもあります。
だからこそ、教育のプロである先生方のお力をお借りして、一緒に考えてみたい。
必要であれば、日々障がいのある人たちと関わっているノーサイドのスタッフにも、福祉の現場からの視点で協力してもらいます。
🍳 もう一歩レシピ1:「障がいがあるって、かわいそう?」
最初は、ちょっとドキッとする問いから。
「障がいがある人って、かわいそうだと思う?」
子どもたちからは、きっといろいろな答えが出てくるはずです。
「大変そうだから、かわいそう」
「車いすだから大変そう」
「できないことが多そう」
「別にかわいそうじゃない」
ここでは、正解を決めなくても大丈夫。
「かわいそうと思ってはいけません」と教える必要もありません。
まずは、「今の自分はどう思っている?」を素直に出してみます。
※クラスに障がいのある児童や障がいのある家族を持つ児童がいる可能性もあります。特定の児童に意見や経験を求めたり、個人的な事情を話すことを求めないよう配慮が必要です。
そして、出張ボッチャで実際に選手たちと会って、一緒にゲームをする。
強い!
負けた。悔しい。
楽しい!
作戦を真剣に考えている。
思いっきり笑っている。
強い!
そんな時間を過ごしたあとで、もう一度聞いてみます。
「最初に思っていたことと、何か変わった?」
実際の人と出会ったことで、自分の中にあったイメージを、自分自身でもう一度見つめ直す時間です。
🍳 もう一歩レシピ2:「できない」のは、その人だけの問題?
こんな場面を考えてみます。
車いすを使っている人が、建物の前まで来ました。
でも、入口には階段しかありません。その人は中へ入ることができません。
そこで質問です。
「中に入れないのは、車いすを使っているから?」
それとも、
「階段しかないから?」
もし、そこに環境の変化があったらどうでしょう。
・スロープがあったら。
・エレベーターがあったら。
・段差のない入口があったら。
その人自身は何も変わっていないのに、「入れない」が「入れる」に変わります。
ここから、「困りごとって、その人の中だけにあるのかな?」と考えてみる。
もちろん、身体の動かしにくさなど、その人自身が抱えている困難もあります。
でも、同じ人でも周りの環境によって、困りごとが大きくなったり、小さくなったりする。
ここが、次の問いにつながる重要なポイントです。
🍳 もう一歩レシピ3:ボッチャでは、何を変えたから一緒にできる?
ここで、「出張ボッチャ」の体験に戻ります。
選手たちは、全員が同じ方法でボールを投げるわけではありません。
手で投げる人、足を使う人、道具を使う人、サポートを受けながらプレーする人。人によって方法は様々です。
もし、「ボールは必ず手で投げなければいけません」というルールしかなかったら、参加できない人がいるかもしれない。
でも、道具やルール、人のサポートなどを工夫することで、一緒にゲームができる。
では、何が変わったのでしょう?
選手本人が変わったわけではありません。
・道具が変わった。
・ルールが変わった。
・周りの人の関わり方が変わった。
参加できる環境がつくられたことで、「できない」が「できる」に変わった。
出張ボッチャには、そんな場面があふれています。
🍳 もう一歩レシピ4:「障がいって、どこにあるんだろう?」
ここで、今回の中心となる問いです。
「障がいって、その人の中だけにあるものなのかな?」
身体を動かしにくい、見えにくい、聞こえにくい、理解するまでに時間がかかる。
その人自身が抱えている困難は、確かにあります。
でも、その困りごとの大きさは、周りの環境によって変わるのではないでしょうか。
【困りごとが増えるかもしれない環境】
階段しかない、説明が文字だけ、ルールが一つしかない、使える道具がない、周りの人がやり方を知らない。
【暮らしやすさが変わるかもしれない環境】
道具を工夫する、建物を変える、分かりやすい伝え方にする、ルールを少し変える、必要なサポートを考える、本人に「どうしたい?」と聞いてみる、周りの人が少し知る。
その人を変えなくても、周りの環境を変えることで変えられることがある。
まずは、そんな視点に気づいてもらえたらと思っています。
🍳 もう一歩レシピ5:環境には「ハード」と「ソフト」がある
ここは、私が障がいについてお話しするときに、とても大切にしているところです。
環境を整えるというと、スロープやエレベーターなど、建物や道具を思い浮かべることが多いかもしれません。
もちろん、それはとても大切なことです。
【ハード面の工夫】
スロープをつくる、エレベーターを設置する、ボッチャのランプを使う、大きな文字で表示する、分かりやすいマークをつける、使いやすい道具をつくる……など。
こうした「もの」や「設備」の工夫。でも、それだけでは十分ではありません。
【ソフト面の工夫】
ルールを少し変える、説明の仕方を変える、必要な時間をとる、参加の方法を選べるようにする、本人に「どうしたい?」と聞いてみる、必要なときにサポートする、「できない」と最初から決めつけない、「どうしたらできる?」と一緒に考える……など。
人の関わり方やルール、仕組み、考え方も環境の一つ。
ハードを整えることは大切。でも、ハードだけでは足りないことがあります。
反対に、「みんなで優しくしよう」という気持ちだけでは解決できないことも。
だから、
もの・設備・仕組み・ルール・人の関わり方・気持ち。
いろいろなものを組み合わせながら、暮らしやすい環境をつくっていく。そこには、子どもたちもたくさんのアイデアを出せる余地があります。
🍳 もう一歩レシピ6:「誰かがやってくれる」で終わらせない
環境を変えると聞くと、「市役所がやること」「学校がやること」「福祉施設がやること」と思うかもしれません。
もちろん、それぞれの立場にしかできないことはあります。
制度を変えること、建物を改修すること、専門的な支援を行うこと。
子どもたちだけではできないこともたくさんある。
でも、「だから自分には何もできない」ということでもないはずです。
例えば、
・困っていそうな人がいたら、どうしたらいいか聞いてみる。
・遊びのルールを少し変えてみる。
・伝わりにくそうなら、説明の仕方を変えてみる。
・「この人には無理」と最初から決めつけない。
・学校の中で気づいたことを先生や大人に伝えてみる。
一人ひとり、できることは違います。大きなことをしなくてもいい。
「自分にできることは何だろう?」
と一度考えてみる。それも、環境をつくる一人になるということだと思います。
🍳 もう一歩レシピ7:「支える人」と「支えられる人」って、決まっている?
障がいについて学ぶと、
障がいのある人 = 支えられる人
障がいのない人 = 支える人
という二つに分かれてしまうことがあります。でも、本当にそうでしょうか。
私たちも毎日の暮らしの中で、たくさんの人に支えてもらっています。
分からないことを教えてもらう、苦手なことを誰かにお願いする、困ったときに助けてもらう、落ち込んだときに話を聞いてもらう。
反対に、自分が誰かを助ける日もある。
あるときは支える人。あるときは支えられる人。ずっと同じ役割ではありません。
出張ボッチャでも同じです。普段の生活ではサポートを受けることがある選手たちが、学校では子どもたちを楽しませる側になり、ボッチャを教える側になる。そして子どもたちは、選手から教えてもらう。
「支える人」と「支えられる人」を、いつも二つに分けなくてもいい。
みんなが、できることで誰かを支え、必要なときには誰かに支えてもらう。それでいいのだと思います。
🍳 もう一歩レシピ8:「それって、障がいだけの話?」
そして最後に、ここまで広げてみたい。
「今日考えたことって、障がいのある人だけの話なのかな?」
子育てをしながら困っている人、高齢になって動きにくくなった人、日本語が分からず困っている人、大勢の前で話すのが苦手な人、学校へ行きづらくなっている人、災害で突然暮らしが変わった人、自分では解決することが難しい問題を抱えている人……。
世の中には、いろいろな「困った」があります。
そのたびに、「その人がもっと頑張ればいい」と考えるのではなく、
「何が壁になっているんだろう?」
「環境や仕組みを変えられないかな?」
「自分にできることは何だろう?」
と考えてみる。
出張ボッチャで見つけた、「工夫すると、できることが変わる」という考え方は、障がい福祉だけのものではありません。
いろいろな社会の課題を考えるときにも使える見方。
だから、この授業で障がいについて詳しくなることだけがゴールではありません。
むしろ、「世の中には、自分がまだ気づいていない困りごとがあるかもしれない」と少し周りを見るようになる。
そして、「だったら、何を変えられるだろう?」と考えてみる。
そんな次の「?」につながると嬉しく思います。
このレシピは、先生方と一緒につくりたいレシピです
低学年編や総合学習編では、「使えそうなところを自由につまみ食いしてください」とご紹介しました。
今回のレシピも、問いやアイデアそのものは自由に使っていただいて大丈夫です。
ただ、「障がい」を正面から扱うこの授業については、少しだけ違います。
問いの投げ方や言葉の使い方によって、「障がいのある人はかわいそう。だから助けてあげよう」というところに戻ってしまうこともある。反対に、「環境を変えれば、障がいによる困りごとは全部なくなる」と単純に考えるのも少し違う。
障がいのある人も、一人ひとり違います。
困っていることも、必要なサポートも違います。
だから、このテーマで授業をしてみたいという学校があれば、
「これまでどんな学習をしてきたのか」
「出張ボッチャで子どもたちはどんなことを感じていたのか」
「この先、どんなことを一緒に考えてみたいのか」
を先生方から教えていただきながら、一緒につくれたらと思っています。
必要であれば、福祉施設ノーサイドのスタッフに協力してもらうことも可能です。
先生は、子どもたちの教育の専門家。
ノーサイドは、障がい福祉の現場を知っている専門家。
選手たちは、自分自身の暮らしや経験を持っている人。
そしてアンドナは、その人たちを楽しくつなぐ役割。
誰か一人が全部を知っていなくてもいい。それぞれが持っているものを持ち寄って、「あーでもない」「こーでもない」と一緒に考える。そんな総合学習になったら面白いと思います。
最後に|障がいから、社会のいろいろな「?」へ
私が子どもの頃にも、障がいのある人のお話を聞く機会がありました。
そのときは、「障がいがあって大変だけれど頑張っている」「すごいな」「私も頑張らなくちゃ」というところに着地することが多かったように思います。
もちろん、そこから感じることもある。
でも、今、出張ボッチャを通して子どもたちと一緒に考えてみたいのは、もう少し違うことです。
「かわいそうだね」で終わらない。
「助けてあげないとね」で終わらない。
できないことや困っていることがあったとき、「何が壁になっているんだろう?」と考えてみる。
ものを変えられるかもしれない。仕組みを変えられるかもしれない。
ルールや人の関わり方を変えられるかもしれない。
そして、「自分にできることは何だろう?」と考えてみる。
あるときは誰かを支える。あるときは自分が支えてもらう。それでいい。
いろいろな人が、それぞれのできることを持ち寄って、少し暮らしやすい環境をつくっていく。
そして、その考え方は障がいだけではなく、いろいろな社会の課題にもつながっていく。
出張ボッチャで出会った一人の選手。
一つの道具。
一つの工夫。
一緒に笑った一つの体験。
そこから、「じゃあ、ほかにはどんなことがあるんだろう?」と、子どもたちの目が少し社会へ広がっていく。
障がいについて「正しい答え」を覚えるよりも、何かに気づき、自分で問いを持ち、社会のことを少し考えてみる。
出張ボッチャが、そんな時間の入口になれたら。
これが、私たちアンドナからの提案です。
【先生向け】つまみ食いOK!「出張ボッチャ」をもっと楽しむ活用レシピ(低学年編)
「出張ボッチャ」を、もっと学校での学びに活かしてもらえたら。小学校低学年向けに、事前授業・当日・事後授業で使える問いかけや活動例を「活用レシピ」としてまとめまし...
【先生向け】つまみ食いOK!「出張ボッチャ」をもっと楽しむ活用レシピ(総合学習編)
出張ボッチャで生まれた「なんでだろう?」を、次の学びへ。選手との体験から、図書館で調べる、福祉施設のスタッフに聞く、地域を見てみる、自分たちで考えて試してみる。...

