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【インタビュー】施設の想いが言葉になると、チームが動き出す。Ricoraとアンドナの伴走記録

写真左:リコラの管理者 河村さん

こんにちは、andna(アンドナ)の野村です。

アンドナでは、福祉施設の広報や採用のサポートだけでなく、施設のみなさんと一緒に、これからの運営について考える時間もご一緒しています。

その一つが、奈良市の重症心身障がい児デイサービス「Ricora(リコラ)」のみなさんと毎月続けている「リコラのミライ」(2023年10月〜現在も継続中)です。

「リコラのミライ」は、知識やスキルを学ぶ研修というよりも、正解が一つではない施設の未来について、スタッフの皆さんと本音で語り合い、想いを共有していく時間です。
この時間の中でアンドナが大切にしているのは、答えを渡すことではなく、みなさんと一緒に悩み、考え、言葉にしていくこと。
管理者である河村さんとスタッフの皆さんが主体的に対話を重ねる中で、言葉が変わり、施設の空気が変わり、少しずつ「確かな変化」が生まれていきました。

今回は、リコラの管理者である河村さんにインタビューを行いました。
一緒に育ててきた「リコラのミライ」を通じて、施設にどのような変化が生まれたのか。
そして、これからどんな未来を描いていきたいのかを、率直な言葉で語っていただきました。



【Profile】
河村雅美 
重症心身障がい児デイサービス Ricora(リコラ) 管理者

経歴
看護師として市民病院の小児病棟に勤務
東大阪市の重症心身障がい児を専門とした福祉施設で9年間勤務
2021年3月奈良市にRicora(児童発達支援・放課後等デイサービス)を開設
小学生から大学生まで、4人の子育て中
趣味は仏閣巡り!

リコラのInstagram
https://www.instagram.com/ricora.nara/

重症心身障がい児デイサービス Ricora(リコラ)スタッフのみなさん

「伝わっている」と思っていたのは、自分だけだった

アンドナと関わる前、河村さんは施設運営において、ある壁を感じていたと言います。

「『こういう施設にしたい』という想いは自分の中にありましたし、伝えたら分かってくれるだろうと思っていました。

でも、それが全然伝わっていなかったんです。
考えている根っこは同じでも、私が毎回違う言葉で伝えてしまっていたり、伝え方が変わってしまったりしていました。


スタッフからすれば『以前と言っていることが違う?』と迷いが生じてしまい、想いはあるけれど、それをどうやって日々の行動に落とし込めばいいのか、具体的な方法が見えていませんでした。

そんな状況を変えるため2023年10月にスタートしたのが、月に1回、スタッフみんなで想いを共有し、施設の未来を考える「リコラのミライ」でした。

まず取り組んだのは、想いを「共有する」のではなく「形にする」こと

しかし、「リコラのミライ」を始めてすぐに、現場で「想いの共有」ができたわけではありません。

実は、多くの経営者やリーダーの方とお話しする中で、「自分の熱い想いがスタッフに伝わらない」という悩みをよく耳にします。
でも、伝わらないのではなく、「自分の中にある想いが、まだ言葉として形になっていない」だけなのかもしれません。
私自身の経験からも、伝えているつもりが、伝わっていないことも少なくないと感じています。

そこで「リコラのミライ」でも、いきなりスタッフと想いを共有するのではなく、一緒に対話を重ねながら、まずは河村さん自身の頭の中にある想いを、誰にでも伝わる「言葉」として形にしていくことから始めました。
誰よりも私が河村さんの想いの理解者となれるように。

河村さんは当時をこう振り返ります。

「リコラのミライを始めた当初は、スタッフみんなに変化はなかったと思います。
まず変わったのは、私自身でした。


当初は、私自身が『管理者って何だろう』『どうやってチームを作ればいいんだろう』と迷っていて、スタッフの意見を聞いては自分がブレてしまうこともありました。


そんな中、アンドナの野村さんと対話を重ね、自分の頭の中を整理し、想いを『言語化』していきました。
そうして自分の中の想いが明確な『言葉』として決まったとき、すごく楽になったんです。
この言葉で伝えればいい、間違っていないんだと、自分への自信に変わっていきました。


その集大成として、完成したのがリコラのパンフレットです。

今回、画期的な取り組みとして、パンフレットを「2種類」作成しました。
一つは、ご家族・支援者向けの「施設紹介パンフレット」
そしてもう一つが、企業や地域向けの「外部連携パンフレット」

基本的に福祉施設では、ご家族・支援者に向けた施設紹介のパンフレットしか作らないことがほとんどです。
しかし、リコラが目指す「福祉以外の人とどんどんつながる」という目標を実現するためには、福祉の外の世界へ向けて、自分たちの想いや価値を伝えるツールが必要だと思い提案させていただきました。

入社間もないスタッフにも想いが伝わるように、誰もがわかりやすい言葉で『Ricoraの理念』を考えました。
河村さんの想いが凝縮された言葉が、これら2つのパンフレットとして形になったことで、リコラが目指す方向性が誰の目にも明らかになりました。

【Ricoraの理念】

Ricoraのミッション
一緒につくろう! 子どもたちの未来を

Ricoraの目標
・子ども心と共に、わくわくの冒険を楽しむ
・福祉以外の人とどんどんつながる

Ricoraの大切
・一番に考えるのは子どもたちのこと
・できないではなく、どうしたらできるのかを考える
・やってみよう!を楽しむ気持ち

リコラのミライ ワークショップ

想いを形にした2種類のパンフレット

■施設紹介パンフレット(A5サイズ三つ折り)

とにかくワクワクとしたリコラの雰囲気を伝えたいと考え、飛び出す絵本のようなイメージで作成。
スタッフのみなさんが大切にしていることがギュッと詰まった、元気で楽しいパンフレットができました。

施設紹介パンフレット(表面) A5サイズ三つ折り
施設紹介パンフレット(中面) A5サイズ三つ折り

■外部連携パンフレット(A4サイズ二つ折り)

外部連携パンフレットは、これからご一緒したい企業や地域の方向けに、どんな風につながれるのかをお伝えするもの。
多くの方に目にしていただき、「リコラと一緒に何かしたい」と思っていただくことを目指しました。

外部連携パンフレット(表面)A4サイズ二つ折り
外部連携パンフレット(中面)A4サイズ二つ折り

完成したパンフレットは、スタッフのみなさんが「知り合いに渡したい」と自ら手に取るものになりました。
想いが形になったことで、リコラの魅力を誰もが伝えやすくなったのです。
(制作ディレクション:アンドナ/デザイン・レイアウト:株式会社ねき)

「言葉」が決まると、スタッフが自走し始めた

目指すべき「ゴール」が明確な言葉になったことで、現場には大きな変化が生まれました。

ゴールがブレなくなったことで、『ここに行くよ』ということだけを伝え、やり方は何でもいいと任せられるようになりました。

スタッフも『こういう風にしたい』と自分の言葉を出しやすくなり、会議の質も変わりました。
日々の業務やイベント企画で迷ったときも、『リコラが大切にしていること』という原点に戻れる。
その安心感が生まれたことで、スタッフがそれぞれの立場で自信を持って仕事ができるようになったと感じます」


例えばイベントの企画においても、ただ決まったことを段取り通りに行うのではなく、「なぜそのイベントを行うのか?」という目的の部分からスタッフ間でしっかりと共有するようになりました。

そうすることで、「担当者が一人で抱え込む」のではなく、全員が同じ方向を見ながら自分たちにできることを考え、他のスタッフを巻き込みながらチームとして行動できるようになったそうです。

リコラのスタッフ「推し活イベント中」

外部の視点がもたらした「福祉の外」とのつながり

施設運営はどうしても内向きになりがちですが、第三者であるアンドナと対話を重ねる中で、「外とのつながり」にも変化が生まれていきました。

「医療や福祉の世界にいると、どうやって他の世界とつながればいいのか分からないし、怖さもあります。
そんな中、野村さんは第三者として、良いことも悪いことも客観的に評価してくれました。
過保護になりすぎず、でも一緒に考えてくれる存在です。

リコラの理念が言葉になったことで、『じゃあ、外とつながるためにはどうしたらいいの?』と、ただ会うだけではない、つながり続けるための視点が見えるようになりました。」


今では、スタッフのみなさんが自発的に看護実習生を受け入れたり、地域の保育園の子どもたちと交流する企画を立ち上げたりと、少しずつ外の世界へとつながりを広げています。

1人で作る未来から、みんなで楽しむ「ゴールのない未来」へ

「リコラのミライ」を続けて3年。河村さんの「未来の描き方」も大きく変わりました。

「最初は、自分が1から生み出して、切り開いていかなければいけないと思っていました。
でも今は、私が伝えた想いを受けて、みんながいろいろなことを考え、リコラを作り上げてくれている。
それが本当にすごいし、嬉しいんです。


これからは『こうなりたい』という決まったゴールはありません。

いろいろな人が関わって、思ってもみなかったことが起きる。
その『ゴールのない面白さ』を、みんなと一緒に楽しんでいきたいと思っています。」

「こんなことがしたいね」と言い続けられる仲間がいること。
そして、やってみようと挑戦できる場所であること。
それが今のリコラの最大の強みです。

アンドナとこれからも「夢を語り続けたい」

最後に、これからどんな未来を作っていきたいか伺うと、河村さんらしいワクワクする「野望」を教えてくれました。

「子どもたちが卒業した後、『生活介護施設(※)に行く』という決まりきった流れだけでは面白くないなと思っています。障がいがあっても、自分たちで稼ぐ仕組みを作れないか。

そして、稼いだお金で自分たちで介助者を雇うなど、人に頼るべきところは頼りながら、対等に社会で生きていく。
そんな新しい仕組みを、数年かけて作り出せたらいいなと企んでいます。


アンドナさんとは、これからも一緒に『夢』を語り続けていきたいですね!」


※「生活介護施設」とは、重度の障がいのある18歳以上の方が通所する施設。


【編集後記】

私がリコラに関わり始めたのは、2023年の春でした。会社員を辞めたばかりの私に、初めて仕事を依頼してくださったのがリコラさんです。
それから今日まで、河村さんやスタッフの皆さんと一緒に、正解のない未来を考え続けてきました。

リコラが変わっていったのは、アンドナの力だけではありません。
河村さんが一歩を踏み出し、スタッフの皆さんが「リコラのミライ」を自分ごととして受け止め、楽しみながら動き出してくださったからです。

アンドナはこれからも、答えを教える存在ではなく、現場で悩みながら未来を面白くしようとする方々の横を、一緒に走り続ける伴走者でありたいと思います。

河村さん、素敵なお話をありがとうございました!

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