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Cafe andna

喫茶アンドナ

andna仲間のリレーエッセイ

わたしの思い出ご飯

河村雅美 重症心身障がい児童デイサービスRicora 看護師

重症心身障がい児童デイサービスRicoraの管理者をしています。家庭には子どもが4人、犬が3匹(スタンダードプードル2匹、トイプードル1匹)で、毎日がわちゃわちゃ過ごしています。そのせいか、どんなにうるさくても眠れます!

喫茶アンドナ店主の野村から河村さんへの質問
Q
今の職業を選んだ理由はなんですか?
A
父の一言がきっかけ

看護師になったのは、父からの一言「お世話が好きだから、人と関わる看護師になれればいいね」がきっかけ。本当は、アドベンチャーワールドのシャチの上に乗るお姉さんに憧れていたけれど、泳げなかったので断念(笑)
今でも、父の一言に感謝しています。

40年ほど経っても鮮明に残る思い出。
それは、ホットミルクを飲んだときのような、ほんのり幸せで甘い記憶。

コンロの中でこんがりと皮まで焼き上がった塩鮭を軽くほぐし、
ふっくらと炊き上がったご飯にのせ、熱いお茶をかけるだけのシンプルな鮭茶漬け。

この一杯の鮭茶漬けには、大好きなおばあちゃんと母の姿が焼き付いている。
隙間だらけの長屋の狭いキッチンで、ぐつぐつと煮立つお鍋を見つめながら味見をする二人。
ぺちゃくちゃと弾む笑い声。どんな話をしていたのかは覚えていないけれど、楽しそうだった。

キッチンのいい匂いに誘われ、二人の間に割り込むように「お腹すいたよ」と伝えると、
「ご飯はまだだよ。でも、お昼の鮭が余っているから、お茶漬けでいい?」と、
おばあちゃんが優しい声で答え、ササッと手際よく作ってくれた。
仕上げの塩が効いたその一杯は、ほっぺが落ちそうなくらい美味しかった。

いつもなら、家族そろって食卓を囲むけれど、そのときはキッチンのそばにある小さな座卓。
目の前には並んで立つおばあちゃんと母。
それは、私にとって特別な席だった。

何でもない一杯の鮭茶漬け。
この後の人生で何度も口にした味なのに、おばあちゃんの鮭茶漬けを超える味には、まだ出会えていない。

私が高校生の頃、祖父母は他界し、キッチンに立つ二人の姿も見なくなった。
成人し、働き、結婚し、子どもを育てる今となって、
「私の成長を見てほしかった」「一緒に喜んでほしかった」「もっと話がしたかった」
そんな気持ちが、心の隅っこにずっと居ついている。

祖父母と愛犬
幼稚園の頃の私(左)と姉 おばあちゃんの家の前で

毎週のように祖父母に会いに行き、一緒に過ごした時間。
あの頃の何気ない日常が、とてつもなく幸せだったのだと、今になって気づく。
いい思い出も、悲しい思い出も、頑張った思い出にも、いつも家族や誰かがいて、今の私がいる。
時には誰かと意見がぶつかることもあるけれど、それも「一人では成り立たないこと」なのだ。

この考えは、私の仕事にもつながっている。
「何でもない日常こそが幸せ」
家族とは、会えても会えなくても、心のどこかで想い合い、ずっとつながっている存在。
だからこそ、Ricoraでも「家族のつながり」を大切にしながら、何気ない日常の中にある小さな幸せを、子どもたちやスタッフと一緒に作り続けている。

「今日はこんなことをして遊んだよ」「こんな顔を見せてくれたよ」
そんな言葉や写真を家族に届けるのは、キッチンで家事をしながら、お母さんがふと振り返り、「今日はどうだった?」と話しかける姿を思い浮かべるから。

私たちの声やRicoraでの出来事が、ちょっとした家族の会話のきっかけになる。
もしRicoraがそんな存在になれたなら、それ以上に嬉しいことはない。

今日も明日も、そしてこれからの未来も。
何でもない一日こそ「かけがえのない幸せ」だと感じられる私でありたい。

Ricoraのスタッフと
現在の私と愛犬たち

******

~喫茶アンドナ店主 野村より~

河村さんは、以前勤めていた障がい児者福祉施設で一緒に働いていた仲間。
その頃、河村さんは障がい福祉での看護師としての働き方を、私は現場経験のない私の福祉での役割を模索していました。
答えがハッキリとしないまま、河村さんと私はそれぞれ前職を離れることになります。

そして今、また一緒に答えを探すことに。
あの頃見えなかったことが見えてきて、少しは成長しているのかなと思ったり、さらなる課題も感じたり、障がい福祉の奥深さを感じる日々です。

とはいえ、障がい福祉にたくさんの人を「楽しく」巻き込むことを使命としている私。河村さんと楽しいことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。
福祉以外の人から寄ってきてくれるくらいに!

Q
河村さんから次の方への質問

100万円を好きに使っていいよと言われたら、何に使いますか?