恭佳さんのこと
23歳 母、兄との3人暮らし
重度の知的障がい(障がいの原因となる疾患は不明)
食べることが大好きで、好き嫌いはありません
物静かで我慢強く愛嬌があるかわいらしい女性
通所している八尾市のノーサイド(生活介護施設)では、アート活動を行っており、アート展での入選やスターバックスでの個展も開催
きょうちゃんのお母さんにお話を伺いました
親なき後のことばかりに囚われていたころもありました。
でも、スタバでの個展とぷろちゃれへの挑戦が、守るだけではなく前に進むというきっかけに。ともに支え合いながら、障がい者が必要とされ活躍できる場が増えることを願っています。
ノーサイド(生活介護施設)の魅力
スタッフの活動性が高く、利用者の心を動かすところ
恭佳は筋肉が弱く疲れやすいので、常に休憩が必要でゴロゴロ過ごしてしまいます。でも、ノーサイドのパワフルさと、スタッフさん自身が楽しみながら引っ張ってくれるところが、恭佳にはとてもいい刺激になっています。
ノーサイドでのアート活動
できることを伸ばし、アート作品にまで昇華させる取り組み
私も恭佳が夢中で取り組めることをみつけたいと思い、家で絵を描かせたこともありましたが、アートというにはほど遠く難しいなと。ノーサイドにアートの先生が入ってこられて、恭佳の描く1本の線と線をつなげることでアートに変えていき、完成した作品を見たときに、こんなにも変わるということに驚きました。恭佳のできることを伸ばし、アート作品にまでつなげていただく機会を持てたことは、奇跡だと感じています。
そして、ノーサイドでは、アート、音楽、ボッチャとたくさんの選択肢があることで、「何でもチャレンジできるよ」と言われているようで、気持ちに余裕が生まれます。
ぷろちゃれの取り組みを聞いたときの印象
(2023年5月 スターバックスでの個展の際に初めてお母さんとお話をしました)
現実感がわかなかった初対面から少しずつワクワクを感じるように
最初の出会いのときは、野村さんの望まれていることがとても高く感じて、現実味がわきませんでしたが、何度か話をしているうちにそういう挑戦も面白いなとワクワクしてきて、もっと話を聞いていたいと思うようになりました。
障がい者として感じる不便な経験やできないとあきらめていたことを、情報として提供することで、企業とのコラボで商品開発に繋がるとしたら、すごいことだと思いました。
「きょうちゃんタイムズ」の作成
(ぷろちゃれ参加者へ、きょうちゃんが生まれてから今までのストーリーを伝えるための資料を、お母さんと数日間かけて作成)
辛かったことをいい思い出に変えていく作業
恭佳の人生が年表になっていて、恭佳の頑張りや自分の感情、必死だったときのこと、いろいろな感情が思い出されました。生まれてからのことを話すことで、家族で戦いながら支え合ってきたこともよくわかり、辛かったことも良い思い出に変わってく作業でした。
ぷろちゃれ参加者の方に「きょうちゃんタイムズ」を読んでいただくことで、障がいのある人もそれぞれ違うんだなということを感じていただければと思っています。
個人情報を出すことへの抵抗感
スタバでの個展が変わっていくきっかけに
2023年の春にスターバックスで個展をしませんか?というお話をいただいたときのことです。個展会場では、名前も顔も出し、恭佳が実際に描いているところもお客様に見ていただきました。
個人情報を出すことはデメリットもあるかもしれない、でも、アート活動をするのに作品だけを出すのではなく、「杉森恭佳」という人がいてこの作品があると思うと、個人情報を守るだけでは何も始まらないのではないかと思いました。
名前や障がいのこと、恭佳自身のことを知っていただくことで、動いていく、動かして行けると。そのために、守るだけではなく、個人情報を出しつつ恭佳を守る方法を考えようと思いました。
個展に挑戦することで、いろいろなことが変わり始めるのではないかと思いお受けしました。
夢を持つことで怖さが軽減されていく
それまでの私は、私が死んだ後はこの子はどうなるのだろう…と、親なきあとのことばかりに囚われていて、ワクワクする気持ちや、夢を見るということを忘れていました。
個展開催の提案をいただき、スタバのようなたくさんの人が来る場所で恭佳の個展をできるなんて、一生に一度しかないような夢みたいな話だととてもワクワクしました。
そこでぷろちゃれとの出会いもあり、夢を持つことで、人前に出ていくことへの怖さが軽減されていきました。
ぷろちゃれという新しい挑戦
前に進んでみようと思えたのは、施設との信頼関係があったから
個人情報をだすことや表に出ることで、傷つくこともあるかもしれない、でも、それを恐れていると前に進むことはできず、夢を持った世界には行けないのかなと思っています。
スタバでの個展とぷろちゃれへの挑戦が、守るだけではなく前に進むというきっかけを作ってくれました。
ぷろちゃれは、ノーサイド統括の高木さんのご紹介ということと、ぷろちゃれ管理人の野村さんとお話しする中で情熱的な思いに惹かれていったこともあり、不安な気持ちよりもワクワクの方が大きくなっていきました。
ぷろちゃれの今後に期待すること
障がい者が必要とされ、活躍できる場が増えること
受け入れる側の施設の方にどれだけワクワクを伝えられるかが大切だと思います。スタッフさんがワクワクすることで、ご家族にも熱量が伝わり気持ちが動かされることで、今後のぷろちゃれの発展に繋がると感じています。
すごく遠い期待としては、社会に障がい者が必要とされる場所ができれば、健常者と障がい者が共に生きていける社会になるのかなと。ぷろちゃれを通じて、障がい者の持っている課題が商品となり、社会と繋がっていくことを期待しています。
まずは、知ってもらうことから。それだけでも社会は変わると思っています。
たくさんの方に協力を得られ、ともに支え合い、障がい者がもっと必要とされ活躍できる場が増えることを願っています。
ぷろちゃれ管理人 野村より
杉森さんは穏やかで優しい雰囲気のお母さんです。しかし、お話をしてみると、芯があり優しさの中に強さのある、とても魅力的な方。毎回お会いしてお話するのを楽しみにしています。
このインタビューの際に、こっそりと「実は、恭佳の23歳の誕生日にInstagramを始めたんです」と教えてくださいました。今までSNSで自身や家族のことを発信するなんて考えもしなかったという、控えめな杉森さん。「ぷろちゃれの話をいただいて、私も何かしようと心を動かされたんです」と。
この話を聞いて、本当に嬉しくなりました。
ぷろちゃれは、まだ始まったばかりの取り組みで、大きな結果は出せていませんが、いろいろな場面でほんの少しずつ変化を感じています。
みなさんの協力のもとに成り立つ「ぷろちゃれ」です。関わるみんながワクワクするものにしていきます!
杉森さん、たくさんのご協力ありがとうございます!